歯が生える薬
先天的無歯顎症に対して、点滴で治療可能な歯が生える薬が治験段階に入るそうです。
この薬は分子標的薬の一種らしいです。
分子標的薬はがんの治療などで実用化されています。
以前よりそのような研究が行われている事は知っていましたが、いよいよという事でしょうか。
しかしながら、再度色々文献を探しましたが、今一つ詳細が分からないです。
元々歯の種(歯胚)がない場合、どのようにして作るのか?
歯胚がある場合、成長抑制因子を解除する薬なら分かるのですが無い場合はどうするのか?
歯胚自体をiPSなどを使って作製するのか?
また、歯胚から歯牙完成まで数年かかりますが、その期間短縮はどうするのか?
インプラントのように治療期間6ヶ月と比較してアドバンテージあるのかどうか?
第一大臼歯(6歳臼歯)は名前の通り6歳位に生えてきますが、顎の中の歯胚がレントゲン的に確認できるのは概ね3歳位で6歳位に萌出、歯根が完成するのは8歳位と言われており、完成まで数年かかる事になります。
(6歳臼歯の歯胚が形成されるのは妊娠15週と言われていますので、厳密にはもっとです。)
コストは?副作用は?
私的に一番気になるのは、先天的欠如が起きている部位に、その部位と同じ形態、大きさの歯牙をどのようにして作るのか?
意図した場所に意図した歯牙を再生させられるのかどうか?
前歯部に奥歯が生えてきたら困りますからね。
供覧されたマウスの写真は、前歯の隙間に前歯が生えているような状態でした。
臨床的に様々な疑問があります。
歯牙自体より、歯周病治療、インプラント治療において骨を迅速に再生させる事に新たな手法を確立してもらいたいのですが、既存の技術でも概ね満足できる結果を得られているので、あまり乗り気では無いのでしょうか?
iPSを使って歯牙自体を再生させる事はかなり前に成功しており、夢の治療と一時言われていましたが、やはり各々の部位に適した形を作る事が難しく、未だ実用化されていません。
コストも1本あたり数百万円〜と、膨大にかかるようです。
また、治療期間の問題も。
最近は話題にもならないです。
この研究、無歯顎症の方だけではなく、虫歯、歯周病、外傷等で歯牙を失った方への応用も視野に入れているらしいく、様々な問題を克服して実用化されれば素晴らしい治療方法だと思いますので、期待したいです。
2030年頃実用化を目指すということは、前述の通り歯の生える期間を想定している事なのだと思います。
ただし、医療ニュースは専門知識の乏しいマスコミのミスリードも多いことはご理解された方がいいと思います。
歯科に限らず夢の治療と言われたもので、有耶無耶になったケースは多々あります。
それより、ご自分の歯牙を失わない様、
ブラッシング、プロフェッショナルメインテナンスが大事です。
また、歯科治療自体も精度の高いものを受けられる事をお薦めします。
歯科医が知識、経験の乏しい治療、精度の低い治療、治療とも言えない治療を行なって逆に患者さんの口腔環境をダメにしているケースが多々ありますので。