大きな誤解・セラミックが保険診療より優れているとは言えないこと

被せるものを銀歯(保険診療)にしますか?セラミック(保険外)にしますか?とはよくある話。

当院ではこんな安直な選択肢の提示は、まぁ、あり得ないですが。

多くの患者さんはセラミック=高価なんだから保険診療より優れていると考えておられるようで、盲信的にセラミック、セラミックと患者さんの方から言われる場合もありますが、疑問に思えるケースも多々あります。

術前写真

(注・当院で行った治療ではありません)

他院において数年前に治療されたそうです。

(なぜ、今回その歯科医院を受診されないのか定かではないですが)

セラミッククラウン、セラミックインレーが装着されていますが、適合状態が極めて悪く、境目に大きな段差があります。

インレーにおいては最初コンポジットレジン充填が行われているのかと思いましたが、違いました。

適合不良のためはみ出たセメントでカピカピになっていたのでした。

一番右側の歯牙の状況は比較的マシ。

他の3本の根管治療も薬がきれいに、緊密に充填されておらず全くうまくできていない。

歯根先端には影=膿のような透過像。

パーフォレーション(治療中に歯科医自身によって歯牙に穴を開けられた様な所見も)

虫歯の取り残しのような所見も。

歯周病の処置も何も行われていません。

他の部位も同じような感じ=全体的に高いコストがかかっている割には治療クォリティーが著しく低いことは否めないです。

もっとも、この患者さんは確実にメインテナンス等も行われていないので、それも問題ですが。

また、一番の問題は患者さんご自身が高いお金をかけてセラミックで治療したのだから大丈夫という誤った認識をお持ちのことです。

地盤工事、基礎工事、もいい加減な状態で立派な建物を建てても何の意味もないのと同じです。

このレベルなら当院の保険診療には太刀打ちできないと思います。

当院での保険診療は保険診療の規程内において可能な限りベストを尽くします。

セラミックなど保険外診療の場合は余計に時間をかけ、最高レベルの機材を用いてコストに見合う次元の高いゴールを目指します。

保険も保険外も何から何まで行うことは同じ、被せる材質が違うのみでは何の価値もないです。

そんな手抜きでは歯科医院は繁盛するでしょうが、たとえ患者さんが望まれても、私はそんなことして治療とも言えない行為を行う必要ないと考えます。

結局、この患者さんは私の説明に納得できなかったのか、当院での治療とはなりませんでしたが、それはそれでいいと思います。

私は正確、ていねいな説明は行いますが、治療への誘導、説得など一切行いません。

患者さんが私の説明から、ご自身で判断されればいいと思いますし、無理して行ってもロクなことにならないです。

また、治療行う以上は当院としての責任がありますので、いい加減なことはできない。

患者さんが歯科医学的に根拠のないようなことを「これでいいから」と言われても、うまくいかなかった場合、責任の所在は判断、治療したその歯科医にあります。

無論、例外もありますが。

この治療を行った歯科医はベストを尽くしてコレなのか?ダメと自分でも自覚しているのか?

十分、ご理解いただきたいです。